はじめに

この記事では、「物販企業様で、物流委託している皆様」に役立つ、「物流人材の育成について」を、LogiGaden(ロジガーデン)では、「2つの物流階層別人材育成方法」として解説させていただきます。尚、この記事は、物流運営形態が ”物販企業様が、物流を委託している”場合となります。

「物販企業様:自社物流運営」の方は、こちらをどうぞ。
・物販企業様の自社物流人材育成:4つの物流階層別育成方法とは?→

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・3PL物流会社様の物流人材育成:4つの物流階層別育成方法とは?→

物流を委託している物販企業の「2つの物流人材階層」と育成について

物流を委託している物販企業こそ、物流人材の育成は非常に重要な意味をもっています。その理由は、実際の物流作業や物流運営は、委託先の物流会社様が行うということです。そして、物販企業様は委託先の物流会社様が、「エンドユーザー様満足度が高く、付加価値サービスも高く、競合他社と差別化がされ、それが最適な物流コストで提供される」ように、”目的の共有をしながら、具体的な要望を出して”、あるべき理想の物流サービスの構築を行っていく必要があります。シンプルにすると下記が、物販企業様の物流部門と物流会社の役割を整理した表となります。

  物販企業の役割(物流戦略機能)物流会社の役割(物流改善&運営機能)
通常業務物流基本機能の運用・品質評価・改善依頼→←物流現場オペレーション実行&運営
改善業務物流サービス、コスト削減の要望・指示 →←物流改善、最適な物流コスト提供
開発業務物流差別化戦略共有、具体的な要望・指示→←物流サービス開発、物流付加価値創造
物販企業、物流企業の役割一覧化の一例

上記をご覧いただくと、物流を委託している場合においても、物流改善や物流サービス開発の成功確率は、物販企業様側物流戦略人材の育成と物流知見の量と質に、密接に関係しています。その為、物販企業様の社内物流戦略人材の育成は、不可欠であり、より良い物流サービスの構築の為に避けて通れないポイントです。

しかしながら、自社での物流運用の場合とは違って、育成する階層数が違います。(大きな違いは、自社での物流運用の場合は、物流センターを運用する人材が不可欠であることです。)物流を委託している場合は、物流会社様が物流センターを運用しているので、より物流戦略に特化した人材、そして物流課題解決プロジェクトマネジメントを行う人材が必要となります。

そのため、社内人材の育成は、2階層あり、「物流戦略人材」「物流責任者人材」となります。

物流戦略人材物流責任者人材
物流戦略立案と共有
物流戦術立案と共有、タスク化
物流課題解決プロジェクトマネジメント
物流サービス開発プロジェクトマネジメント
物流を委託している物販企業様の物流人材像

それぞれの階層毎に、日々の業務の役割が違います。そのため育成する内容も違ってきます。

2つの物流人材階層の「業務」と「人材育成+自己研鑽」の明確化

物流を委託している物販企業様が育成する人材は、「物流戦略人材」「物流責任者人材」となります。
それぞれの業務内容と、人材育成の役割を下記に整理しました。

「通常業務内容」と、業務内容に含まれますが特別に「委託先管理」は一つの項目にしました。そして「人材育成+自己研鑽」の3つの項目に整理しましたが、どれも重要な役割と業務となります。

物流人材階層通常業務内容委託先管理人材育成+自己研鑽
物流戦略
人材
物流戦略立案/決定
物流部門収支管理
物流人材育成管理
改善タスク管理
 コスト削減タスク管理
最重要タスク実行
DX戦略立案/決定
…等々
委託先関係強化
キーマン
担当者窓口

委託先タスク
進捗管理
<自分の物流スキル向上
戦略知見向上・体系化
戦略立案&決定力向上・体系化
委託先総合管理力
向上・体系化
<下位層の育成>
・物流責任者育成プラン決定
物流責任者人材育成
・物流責任者人材サポート
物流責任者
人材
物流戦術立案/実行
物流部門収支集計
改善タスク進捗管理
改善タスク立案/決定
コスト削減進捗管理
重要タスク実行
DXタスク実行
…等々
委託先関係強化
担当者窓口

委託先タスク
進捗管理
<自分の物流スキル向上>
責任者知見向上・体系化
戦術立案&実行力向上・体系化
委託先管理力の向上・体系化
2つの物流人材階層の一例

物流を委託している物販企業様特有の業務としては、委託先の物流会社管理があります。その内訳は、大きくは二つです。「委託先との関係強化」「委託先タスク進捗管理」となります。

2つの階層別の「人材育成+自己研鑽」について

次に、上記の表を見てもらうと、項目の中に「人材育成+自己研鑽」の列があります。
物流人材育成+自己研鑽のポイントは、3つあります。

 一つ目は、 上位層は、下位層の人材育成を担うということです。
 二つ目は、 自分の物流スキル向上を人材育成の役割に入れることです。
 三つ目は、 パートナーを巻き込む物流会社管理に関連するスキルの育成を行うことです。

特に「物流戦略人材」は、自己研鑽と下位層の育成をおこなう事となりますが、下位層である「物流責任者人材」が必要なスキルをティーチングすることから始めましょう。

物流人材の育成全般に共通することですが、物流は日々刻々と目の前の状況と問題が変化していく特徴がありますので、ティーチングだけではなく、コーチングすることも、とても重要です。特に「物流責任者人材」については、早期の状況判断力(もしくは未然の判断)とチームマネジメント力(特に実行力)が必要ですので、しっかりとしたティーチングによる基盤づくりと、コーチングによるケーススタディの蓄積の両面での育成が必須となります。

*コーチングは、部下から答えを引き出す質問を投げかけ、共感や傾聴の姿勢から気づきを与える方法
*ティーチングは、部下に答えを与える形で指導して、仕事の知識や技術を提供する方法

そして、一見簡単にみえる表となっていますですが、日々の業務を全うしながら、人材育成+自己研鑽も全うして、進めていくのは、とても難しいこととなります。
しかしながら、人材育成+自己研鑽を地道に進めていくことで、間違いなく「あるべき理想の物流の構築」へ近づくことが出来るでしょう。結果として、大きな成果を勝ち取る事ができるでしょう。

「物流責任者人材」の育成について

二つの階層の内、まずは「物流責任者人材」から初めていきましょう。

人材育成のポイント① 物流責任者人材の ”業務の整理”から始める

「物流責任者人材」は、委託している物流においては、最も重要なキーマンとなります。具体的な通常業務内容、委託先管理を確認いただくと、実行に重きをおいた役割となっています。まさしくエンジン的な機能であり、活発的な、積極的な行動が求められます。委託先の物流会社様を巻き込んでの、円滑な現場オペレーション運営と物流現場改善タスク実行、そして物流サービス開発が積極的に推進するかどうかは、「物流責任者人材」実行の量と質に左右されると言っても過言ではありません。

では、まずは「物流責任者人材」の業務範囲、業務内容を明確化し、共有する事から始めましょう。

人材育成のポイント② 物流責任者人材の ”担務表” を作成しましょう

「物流責任者人材」の業務範囲、業務内容が明確化・共有化が出来たら、次に上位層と共に、担務表(=業務分担表)を作成しましょう。毎日、月間単位は必ず作成しましょう。場合によっては追加で週間の担務表を作成する事もお勧めします。

 ①業務範囲、業務内容の明確化しましょう。
 ②毎月やる仕事、毎週やる仕事、毎日やる仕事に分類しましょう。
 ③毎月やる仕事、毎週やる仕事を、月間カレンダーに表記しましょう。【月間業務担務表】
 ④毎日やる仕事を、時間単位(30分単位推奨)に表に落としましょう。【毎日の業務担務表】
 ⑤月間業務担務表と毎日の業務担務表を、関係各位と調整しましょう。【関係各位との業務調整】
 ⑥自らのスキル向上の育成スケジュール作成しましょう。      【月間育成スケジュール表】
 ⑦月間業務担務表と毎日の業務担務表、月間育成スケジュールを調整しましょう。
 ⑧各表のチェック表を作成し、毎日チェックしましょう。      【各表のチェック表】
 ⑨チェック表を毎週自ら確認し上司へ報告し、次週調整しましょう。 【確認・報告・相談・調整】
「物流責任者人材」の業務と人材育成管理プロセスの一例

さて、上記プロセスをご覧いただき、多くの皆様が気づいていただけたかと思いますが、
物流責任者人材の役割の中で重要な「物流戦術プランの立案&実行」と「委託先管理業務」がスケジュールに組み込まれていないです。その通りです。

順序としては、①日々の物流責任者人材自身の業務 >②委託先の物流会社様の日々の物流現場オペレーション業務管理 >③物流戦術プラン立案&実行 ということになります。これは優先順位ではありません。思考プロセスの順序です。

しっかり、上記の①日々の物流責任者人材自身の業務のスケジュールを作成した上で、②委託先の物流会社様の日々の物流現場オペレーション業務管理 >③物流戦術プラン立案&実行物流戦術プラン立案&実行の優先順位を見極め、時間を割いて、全体をスケジュール化していくことが重要です。

人材育成のポイント③ 物流責任者人材の ”時間を生み出す” 事が最優先

ここでのポイントは、「物流責任者人材」の現段階でのスキルと経験をよく検証して、出来る事出来ない事を整理して、最初は、多くを欲張らないことが重要です。まずは出来る事、やるべき事を中心に計画的な担務表を作成して、抜けもれなく毎日・1週間・月間を、やり遂げる習慣化が大事です。

次に、状況を見ながら、習慣化できた事の生産性を上げ、場合によってはやらない事を決めて、次のステップのやるべきことが出来る「時間を生み出すこと」を進めていきましょう。

そして、生み出した時間の中で、新たな挑戦の業務を組み込んでいくことが最善であり、人材育成の最速の道であり、成果が出る人材育成の流れとなります。

「物流戦略人材」の育成について

物流戦略人材の育成については、各物販企業様の方針や状況によって、現実的なパターンがあります。

     ケース物流戦略人材育成自己研鑽該当
 ①経営層に物流戦略思考の
  プロ人材がいる場合

経営幹部が「物流戦略人材」を育成
 ②経営層に物流戦略思考の
  プロ人材がいない場合
×
「物流戦略人材」の育成はできない、
しない
 ③経営層にプロ人材がいないが、
  物流戦略重要視している場合

物流コンサルタントが「物流戦略人材」
と伴走し、結果として育成
物流戦略人材育成の実態パターンの一例

改めて、自社の物流戦略人材の育成について、客観的に、冷静に検証していただいた場合、上記の表をご覧いただくと、どれかが自社の現状況に当てはまるのではないでしょうか?

多くの物販企業様は、自社で物流運用されている場合も、物流を委託している場合のどちらも、物流戦略人材の育成について、悩んでいる、困っている状況であると思います。

それには、理由があります。そもそも、物流戦略人材の育成は、非常に時間がかかります。その為、多くのケーススタディを経験し、体系化できている物流戦略人材の人数が、圧倒的に少ないです。そして日本では、終身雇用やメーカー主導のビジネス環境が長かった為、1つの会社や1つの業界に長く所属して、多様な物流モデルや、汎用性のある物流改善メソッドを身に着ける(=物流戦略思考=物流コンサルティング能力)ことが出来ない状況が、長く存在していたためであると思います。

しかしながら、時代は大きく変わり、1つのビジネスモデルで、長期間勝ち続けられる企業はありません。淘汰されるか、変化に対応していくかのどちらかです。結果として、変化に対応する=多様性のある物流知見を身に着けられる時代にもなってきています。もちろん時間がかかりますが。

さて、このような物流戦略人材が枯渇している中で、競合他社と差別化して、物流で勝ち残るためには、多くの物流戦略人材の活用が、さらに重要な時代になってきているかと思います。

物流戦略人材の育成は、物販企業様の物流競争力に直結します。そして物流戦略人材の積極的な採用・活用による優秀な物流戦略人材群の形成は、非常に重要です。多くの物販企業様がこの事に気づき、行動していくれる事を切に願っています。


委託済物流における物流人材育成 まとめ

ここまで、「物販企業様の委託済物流における物流人材育成:2つの物流階層別育成方法とは?」について、説明させていただきましたが、ご興味をいただけましたでしょうか?もっと詳しく知りたい方、さらに具体的な方法を知りたい方はいらっしゃいますでしょうか?
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