はじめに

この記事では、「物販企業様」「自社で運用している物流」を、より良く「改善させる方法」について説明させていただきます。本記事は、特に ”物販企業様が自社で物流運営”の際に、役立ちます。

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・物販企業様の「委託済物流コスト見える化」&実例フォーマット&運用について→
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「自社物流コストの見える化」について

持続的物流改善において、”自社の物流コストの見える化”が、最重要かつ、最初の壁ととなります。

5つのカテゴリー分類

自社の物流コスト見える化は、下記の5つのカテゴリーに分類して進めていくのをお勧めします。5つのカテゴリーは、見える化した後の問題点・課題点を容易にあぶりだす事ができ、かつ物流改善プランが立案しやすく設計されています。

5つのカテゴリーは、「配送費」「作業費」「保管費」「梱包資材費」「その他費用」となります。物流経費総合計も、もちろん重要となります。

配送費・宅配料金(佐川、ヤマト、郵政等々)
・コンパクト便(ネコポス、ゆうパケット等々)
・路線便(福山、西濃等々) ・チャーター便等々
作業費・物流管理部門社員人件費(固定) ・物流現場社員人経費(固)
・物流現場スタッフ人件費(変動) ・物流現場派遣社員(変動)
・作業効率化関連ロボット/機械/システムの減価償却費(固定)
・作業効率化関連ロボット/機械/システムのランニング費(準固定)
・自社WMSの場合:WMS開発償却費用+保守関連費(固定)
・ASP型WMSの場合:月額使用料(固定)
・ハンディターミナルの月額減価償却費or賃貸(固定)
保管費・賃貸の場合:倉庫賃貸料(固定)
・自社物件の場合:自社倉庫建物償却費+自社倉庫土賃借料+保守関連費(固定)
・光熱費(変動) ・積層ラック、物流ラックの月額減価償却費or賃貸料(固定)
・商品保管用オリコンの月額減価償却費or賃貸料(固定)
・空調設備の減価償却費(固定)
梱包資材費・ダンボール費用(変動)   ・緩衝材費用(変動)
・現場作業消耗品費(変動)
その他費用・納品書印刷用の複合機の月額減価償却費or賃貸料(固定)
・納品書印刷トナー代および紙代(変動)
・上記以外の毎月発生する費用(固定)
・スポットで発生する費用(変動)
5つの費用カテゴリーの内訳例

重要業績評価指標(KPI)を設定

基本的な所では、「売上に占める物流経費の割合」が最も重要です。
次に、「1出荷あたりの総物流コスト単価」も重要です。

KPIとは「重要業績評価指標」(読み方は、ケーピーアイ)です。
→Key Performance Indicator の頭文字をとった略称

そして、上記のKPIの推移し、KPIの増減を見ながら、その要因分析を行う上で、詳細のKPIが必要となります。特に物流改善の余地が高いと言われる作業費関連に関してのKPIも注視する必要があるでしょう。「売上対作業費率」「1出荷当りの作業費コスト単価」

*売上対比関連
 ー総売上に対する総物流経費シェア(売上対物流経費率)
 ー総売上に対する配送費シェア(売上対配送費率)
 ー総売上に対する作業費シェア(売上対作業費率)
 ー総売上に対する保管費シェア(売上対保管費率)
 ー総売上に対する梱包資材費シェア(売上対梱包資材費率)
*1出荷当りコスト関連
 ー1出荷当りの総物流コスト単価
 ー1出荷当りの配送費コスト単価
 ー1出荷当りの作業費コスト単価
 ー1出荷当りの梱包資材費スト単価
*在庫1点当たり保管コスト
 ー在庫1点当り保管コスト単価

上記が代表的なKPIとなりますが、今現在の物流課題や改善活動を進めていく上で、各種追加でのKPI設定が必要となるでしょう。

「KPIの目標設定」と「具体的な評価方法」を決める

KPIの数値を集計できるようになった後に、必要な事はKPIの評価軸を決定することです。具体的には、「期間」と「比べる対象」となります。

改めて確認しますが、KPIや自社物流コスト見える化の目的は何でしょうか?それは”より良い物流を構築する”ことです。良い物流を具体的に表現するには何が必要でしょうか?

それは「目標」です。

皆さん、お気づきいただけましたでしょうか?
ここまで、しつこく、回りくどく解説しているのは、ここが重要なポイントだからです。

KPIを決めた後には、KPI毎の目標数値を設定しましょう。目標数値の設定に際しては、物流に携わるメンバーとの合意形成と共有を行いましょう。目標設定したKPI数値は、自然に、自動的に達成できるものではいけません。合意の上で、難易度を高めに設定する事をお勧めします。

さてここまで進むことができましたら、KPIの評価軸は、「目標対比」「計画対比」となります。
そしてもう一つの評価軸は、「過去対比=前年同月対比」がよいでしょう。上記を行うため、必然的に、評価サイクルは、毎月単位で始めるとよいでしょう。さらに、評価する際には、特定のKPIについては、数か月の移動平均(傾向値)もお勧めです。

当月実績目標数値目標対比率前年実績前年対比率
配送費宅配(佐川)2,0001,500133%1,200167%
宅配(ヤマト)1,000800125%800125%
宅配(郵政)50080063%400125%
宅配小計3,5003,100113%2,400146%
KPIの目標設定と評価方法についての一例

目標と実績との「ギャップ」と「改善活動」との連鎖

物流コストの見える化を行う「目的は、持続的物流改善を進めていく事」です。
次に大事な事は、物流コストの見える化と目標設定を行ったことで、ギャップを知る事ができます。そのギャップを埋める文化の醸成と改善活動につなげていく事が、最も重要であり、物流改善の成果に直結する行為となります。

具体的には、「定期的な会議」「ギャップを埋める物流改善プラン打合せ」の設定です。

誰もがわかることであり、続けていく事が難しいことの一つです。
「定期的な会議」を開催する事は、一見簡単のように見えますが、数か月数年と続けていくと、 実のある会議内容(=物流改善活動に真摯に向き合い、参加メンバーが真剣に取り組む)ではなくなってくるケースも多くあります。
実のある会議とする為には、「ギャップを埋める物流改善プラン打合せ」を事前にすることが大事です。多くの定期的な会議は、時間が決まっています。「ギャップを埋める物流改善プラン打合せ」については、打合せ時間でプランを考えるのではなく、事前に決められた数のプランを考えてきてもらうというルールの設定が必要です。それ程、物流改善プランを出し続けるということは難易度が高いということであり、事前に知っていただけると幸いです。

「全物流経費明細の一覧」をメンバーで共有

「ギャップを埋める物流改善プラン打合せ」に参加するメンバーには、集計された数値だけではなく、全経費明細と金額の明細を共有することが成功へのきっかけとなります。また複数センターや販売部門別に明細が分かれていることも重要です。
物流コストの見える化による物流コスト削減効果は、データのドリルダウンが不可欠であり、詳細コスト単位での対策の積み上げが重要です。

データのドリルダウンとは、データの集計レベルを1つずつ掘り下げて集計項目をさらに詳細にすること。例えば、国別に見ていたデータを都道府県別に集計し直すなどがこれに当たる。

自社物流コスト「見える化の運用ルール」を決めて実践

自社物流コストの見える化の運用については、厳格な運用ルール設定と実践が必要です。特にデータ集計を、毎月、誰がいつまでに、どんなフォーマットで、どんな方法で共有するのか?の水準まで決める必要があります。そして当該メンバーに目的と方法を理解してもらう必要があります。

「自社物流コスト 見える化のフォーマット例」について

下記は、簡易的なフォーマットとなります。前述した目標設定と前年実績を、下記のフォーマットに差し込み、目標対比や前年対比などを集計するのをお勧めします。

各項目や項目名、全体レイアウトについては、企業様毎にリデザインすることをお勧めします。

今回は、簡易的なフォーマットのみとなりましたが、LogiGaden(ロジガーデン)コンサルティングサービスでは、エクセルやグーグルスプレッドシートなどを使用した実用的かつ本格的なフォーマットを各種用意しています。

また、より価値のある自社物流コストの見える化について相談がある方、企業様独自のフォーマットを
作りたい方、そして物流コスト見える化をプロジェクト化したい方については、是非ご連絡ください。


物販企業様の「自社物流コスト見える化」 まとめ

ここまで読んでいただいた皆さん、ありがとうございます。
簡潔にまとめさせていただきましたが、自社物流コストの見える化については、各企業様毎に創意工夫されていることも多いかと思います。目的に合わせて、また事業モデルに合わせて、各種カスタマイズしていくことも重要かと思います。
新型コロナ禍以降の経済環境は、非常に厳しい状況にあります。一方で逆境をチャンスと捉えて、チャレンジを重ねている企業様も多くいらっしゃいます。そんな皆様にとって、本記事が有益なものであれば、とてもうれしい限りです。
LogiGaden(ロジガーデン)コンサルティングサービスとしては、そんなチャレンジ精神豊富な皆様のご支援をさせていただければと、切に願っております。

私達、LogiGaden(ロジガーデン)では、
物流ノウハウや情報を発信する「物流ブログ」と、
良心価格で長く続けられる「物流コンサルティングサービス」を提供しています。
二つの取組みで、物流に携わる皆様のご支援ができるように努めてまいります!ので、
何卒ご愛顧のほど、よろしくお願いします。