はじめに
物流改善の旅は、最初の一歩から始まります。
しかし、物流改善の初めの一歩は、単に行動を開始することではありません。
「体系的に整理する・知る事」が物流改善の基礎となります。この記事では、物流改善を効果的に進めるための知識と方法論を体系的に整理し、理解するプロセスを紹介します。自社の物流を最適化し、ビジネスの成長を実現するための手法を探求しましょう。
プロの物流改善の初めの一歩とは?
物流運営形態には、下記の大きく3つの分類があります。
・「物販会社様」で、「自社で物流を運営」している場合
・「物販会社様」で、「物流を委託」している場合
・「3PL物流会社様」の場合
それは、3つの物流運営形態毎に、必要な特別な物流改善スキームがあるためです。
一方で、「共通の原理原則」も存在します。
また、「時間管理マトリックス」でも述べたように、物流改善を闇雲に、目の前の事だけ、緊急性の高い
だけに絞って改善を進める事は、必ずしも正しい事ではありません。
ここで言う正しい事とは、一時的に表面的には解決したように思える事ではなく、
「本質的に解決して、すぐに同じ問題・課題が振りかかってこないようにすること」です。
火事で例えるならば、消火活動も緊急だが、それ以上に予防活動が重要だという事です。
”消防署”の名前の意味は、火事を消すと事前に防ぐ組織という2つの意味から成り立っています。
前述で、物流改善の時間管理マトリックスというフレームワークを紹介しましたが、緊急性と重要性を、
現在・未来に置き換えて、改善の優先順位を、論理的かつ有効的に選択していく必要を再確認されたかと
思います。
では、この記事では、具体的に
「物流改善のジャンルとカテゴリーとはなにか?を体系的に整理して理解していく」ことにしましょう。
物流改善を体系的に整理する・知るということ
具体的に「物流改善をいかに体系的に整理して理解していくのか?」を説明します。
多くの物流改善は、大きく7つのジャンル・カテゴリーに分かれます。
■現場オペレーション改善関連
■物流コスト改善関連
■人材育成・確保関連
■物流DX関連
■物流組織運営関連
■物流サービスの差別化/戦略化
■未来課題にむけての対応
この7つの物流改善ジャンルを基礎に、自社独自の改善項目をよく考え、追加削除していくのが重要です。
今現在、物流改善を考えている方の多くが、「全体を俯瞰して見ることができていない」状況となってい
ます。それは、物流改善のスキルと経験の醸成には、とても長い時間と多くのケーススタディが必要だか
らです。
物流改善の全体を俯瞰して見ることができていない原因は、二つあります。
「物流改善のスキルと経験不足」が一つ目の原因であり、二つ目の原因は「俯瞰する習慣ができていない」こととなります。
*俯瞰とは、全体を考え、抜け漏れがなく、問題・課題の解決に直結するアイデアを出し続けていくこと
二つの原因を充足する為には、まずは物流改善の全体を体系的に知る事が重要です。
その後、現在の自社の状況を照らせ合わせて、一つ一つの改善アクションプランを実行した後に、評価検証を行い続けていく改善サイクルの運用が必要になります。
それでは具体的な「物販会社様が自社で物流を運用」する場合を例にとって解説していきます。
参考:「物販会社様」が「自社物流を運用」する際の改善ジャンル・カテゴリ
現場オペレーション改善関連
①物流業務フロー最適化・運用 | 業務フロー見える化 |
業務フロー運用管理 | |
業務フロー改善 | |
②物流業務品質最適化・運用 | 品質担保フロー見える化 |
品質担保フロー運用管理 | |
品質担保フロー改善 | |
③物流スピード最適化 | 物流スピードフロー見える化 |
物流スピードフロー運用管理 | |
物流スピードフロー改善 | |
④物流業務リソース最適化 | 物流リソース担当見える化 |
物流リソース担当運用管理 | |
物流リソース担当改善 | |
⑤物流業務環境整備 | エリア別作業環境整備 |
在庫保管ロケーション環境整備 | |
空調エリア環境整備 |
物流コスト改善関連
⑥物流コスト見える化 | 現状物流コスト見える化・運用 |
現状物流コスト評価 | |
⑦物流コスト削減案立案&実行&運用 | 物流コスト削減優先順位策定 |
⑧物流コスト削減:配送料関連 | 配送料改善目標と施策案立案 |
施策の実行 | |
⑨物流コスト削減:作業費関連 | 作業費改善目標と施策案立案 |
施策の実行 | |
⑩物流コスト削減:保管料関連 | 保管料改善目標と施策案立案 |
施策の実行 | |
⑪物流コスト削減:資材・その他関連 | 資材関連改善目標と施策案立案 |
施策の実行 |
人材育成・確保関連
⑫物流決裁者様の戦略性向上 | 物流決裁者様の物流知見向上 |
物流決裁者様の物流戦略・戦術立案力の向上 | |
物流決裁者様のタスク実行管理手法の向上 | |
⑬物流現場責任者様の育成 | 物流現場責任者の意識向上 |
物流現場責任者の行動様式改善(1日の業務担務表等々) | |
物流現場責任者の会議・コミュニケーション構築 | |
⑭物流現場メンバー(社員)の育成 | 現場メンバーの意識向上 |
現場メンバーの行動様式改善(1日の業務担務表等々) | |
現場メンバーの会議・コミュニケーション構築 | |
⑮物流現場スタッフ(アルバイト)の育成 | 現場スタッフの意識向上 |
現場スタッフの行動様式改善(1日の業務担務表等々) | |
⑯物流現場スタッフの人材確保・採用強化 | 直接スタッフと派遣スタッフ比率の可視化&最適化 |
現場スタッフの入社退社状況の可視化 | |
現場スタッフの採用強化対策立案&実行 | |
現場スタッフの退職理由可視化&対策立案&実行 | |
⑰派遣スタッフの人材確保・採用強化 | 派遣会社別の派遣社員労働時間集計 |
アクティブ派遣会社の調達 | |
派遣会社の条件交渉(時給、原則:前日発注翌日対応) | |
派遣会社の条件交渉(前日発注翌日対応) | |
⑱派遣スタッフの有効な業務設計 | 直接スタッフと派遣スタッフ比率の可視化&最適化 |
直接スタッフと派遣社員の業務の役割分担/業務切分け | |
熟練派遣スタッフと当日派遣スタッフの業務切分け |
物流DX関連
⑲物流DXの分野別理解 | 領域別の整理と理解/改善効果別の整理と理解 |
⑳物流DXの目的と進め方の整理 | 何を目的にするのか?社内合意形成プロセルの設計 |
設備投資試算(費用対効果)表の作成プロセス | |
㉑物流DX導入ステップの設計 | 設備&システムだけではなく運用をどう最適化するのか? |
㉒物流DXエンジニア思考の定着化 | 社内の理解を深めていく推進リーダーとの関係強化 |
㉓物流DX 選定 | *倉庫運営システム(WMS)関連 |
*生産性管理(LMS)関連 | |
*情報共有(SPS等々)関連 | |
*事務・データ・伝発業務(RPA)関連 | |
*庫内入荷作業の機械化・ロボット化(入荷システム) | |
*庫内搬送作業の機械化・ロボット化(搬送ロボット) | |
*庫内出荷作業の機械化・ロボット化(各種) | |
*庫内梱包作業の機械化・ロボット化(各種) | |
*庫内商品保管効率向上の物流機器・物流ラック等々 | |
*資材作成等の機械化・ロボット化 | |
*撮影や採寸の機械化・ロボット化 |
物流組織 運営関連
㉔物流組織と組織図と各個人役割の可視化 | 物流組織図作成 |
物流組織役割表/業務棚卸表作成 | |
㉕各組織、各個人の業務ボリュームの可視化 | 組織別勤怠状況把握(繁忙と閑散期) |
個人別勤怠状況把握(繁忙と閑散期) | |
㉖各組織、各個人のリソースコントロール改善 | 組織別個人別の役割と業務ボリューム改善要望出し |
組織別個人別の役割と業務ボリューム改善案集約 | |
㉗業務効率化の改善策の進捗管理 | 改善案が進んでいる組織はサポート重視委任型 |
改善案が進んでいない組織はトップ推進 | |
㉘物流KPIの設定 | 毎週計測できるKPIの設定 |
毎月計測できるKPIの設定 | |
㉙物流収支表の作成と運用 | 毎月集計できる物流収支表のフォーマット作成 |
物流収支表に目標値を設定 | |
目標値と実績のギャップを埋める組織運用の立案 | |
㉚組織別階層別の定時打合せの設定 | 物流決裁者→取締役、経営層 月@1回 |
物流決裁者⇔物流責任者、物流メンバー 月@2回 | |
物流責任者⇔物流メンバー 日@1回(終礼) | |
物流メンバー⇔スタッフ 日@2回(朝礼、昼礼 | |
㉛改善タスク進捗管理表の一元化 | 各方面から上がってくるタスクの一元管理化 |
タスク一元管理表の可視化、周知化 |
物流サービスの差別化/戦略化
㉜基礎物流サービスレベルの可視化&評価/競合比較 | 受注締切/休日設定 |
配送料価格/配送料無料価格 | |
モール物流レビュー評価 | |
繁忙閑散期の出荷リードタイム | |
繁忙閑散期の入荷業務リードタイム | |
㉝基礎物流CRM(付加価値)の可視化&評価/競合比較 | 梱包資材デザイン/表 |
内容物デザイン/表記 | |
返品対応/表記 | |
受注・出荷情報の回数・タイミング | |
㉞個別ニーズ: 業種別商品形態別の物流CRM(付加価値)の可視化&競合比較 | アパレル特化/化粧品特化 雑貨特化/食品特化/大型商材特化 |
㉟個別ニーズ: ビジネスモデル別の物流CRM(付加価値)の可視化&競合比較 | EC受注発注+在庫保管型 |
EC最小在庫保管型 | |
EC+店舗(オムニチャネル)型 | |
EC+卸在庫共有型 | |
メーカーEC(D2C)型 | |
アマゾンFBAorZOZO特化型 (ECモール物流納品特化型) | |
㊱個別ニーズ: 繁忙閑散ギャップ型の物流の可視化&評価&競合比較 | |
㊲個別ニーズ: 急激成長に対応する物流の可視化&評価&競合比較 |
未来課題にむけての対応
㊳労働力不足への対応 | 幹部・リーダー層人材の確保&育成 |
営業マン・マーケター・現場社員層人材の確保&育成 | |
スタッフ・派遣社員層人材の確保&育成 | |
圧倒的な省人化への設備投資 | |
自社だけではないビジネスネットワークの強化 | |
㊴物販市場/物流市場減少への対応 | 市場減少に対する柔軟な物流アセット戦略 |
各種縮小におけるコスト影響の削減 | |
㊵社会/経済環境の変化への対応 | コモディティ化しずらいビジネスモデルの構築 |
予測できない不可避な災害・経済ショックへの対応力強化 | |
㊶持続可能なエコシステム構築 | ビジネス継続ができるインフラ環境の整備 |
各種ビジネスリスクの軽減 |
「物流改善を体系的に整理する・知る事」のまとめ
7ジャンル毎に、改善項目を整理することは重要ではありますが、整理した後に、長い期間固定化するべきではありません。数か月に一度状況と照し合せて、過不足を調整していくことを推奨します。
上記に7つのジャンルの一例をあげましたが、上記を整理し共有するだけで、物流部門・物流組織や物流改善に携わるメンバーが自発的に物流改善を進めていくという訳ではありません。
整理する・知ることは、まだ序章にすぎません。
しかしながら、多くの関係者が物流改善を持続的に恒常的に進めていく文化を形成するためには、必ず必要なことです。一度整理して共有するだけでなく、独自の物流改善体系をより良くしていく活動を行ってください。近い将来、物流改善が組織的に自発的に、そして物流面での大きな利益と大きな付加価値を得る事でしょう。
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