はじめに
この記事では、「物販企業様で、自社で物流運用している皆様」に役立つ、「物流人材の育成について」を解説させていただきます。
LogiGaden(ロジガーデン)では、詳しく「4つの物流階層別人材育成方法」として解説させていただきます。尚、この記事は、物流運営形態が ”物販企業様が自社で物流運営”の場合となります。
「物販企業様:委託済物流」の方は、こちらをどうぞ。
・物販企業様の委託済物流における物流人材育成:2つの物流階層別育成方法とは?→
「3PL物流会社」の方は、こちらをどうぞ。
・3PL物流会社様の物流人材育成:4つの物流階層別育成方法とは?→
自社物流運営のための「4つの物流人材階層」と育成について
4つの階層とは、
「物流戦略人材」「物流責任者人材」「物流社員人材」「物流作業スタッフ人材」となります。
それぞれの階層毎に、日々の業務の役割が違います。そのため育成する内容も違ってきます。各階層毎に育成するポイントについて、下記にて解説していきます。
4つの物流人材階層の業務の役割と人材育成の役割の明確化
物流戦略人材以外の3つの物流人材階層の皆さんは、日々の物流現場オペレーションが主業務となります。
その日々の主業務と同時並行で、人材の育成を行っていきます。労働集約型のビジネスにおいて、各階層ごとの役割の明確化は、非常に大きな意味があります。
まずは、社内の物流人材を階層に分けて、業務の役割と人材育成の役割を明確していきましょう。
なぜ、業務の役割と人材育成の役割を並べて一覧化するのか?と疑問に持つ方もいるかもしれません。それは、円滑な物流現場オペレーションの構築、ならびに物流業務改善において、人材育成が不可欠であり、一方で業務も同等に重要だからです。どちらかだけで上手くいくことはありません。
物流人材階層 | 業務の役割 | 人材育成の役割 |
物流戦略人材 | 物流戦略立案 物流戦略決定 物流部門収支管理 物流人材育成管理 物流改善タスク管理 コスト削減タスク管理 最重要タスク実行 物流DX戦略立案 物流DX戦略決定 …等々 | <自分の物流スキル向上> 物流戦略知見の向上・体系化 物流戦略立案力の向上・体系化 <下位層の育成> 物流責任者育成プランの決定 物流責任者人材の育成 <2階層下の育成> 物流社員育成プランの決定 物流社員育成サポート |
物流責任者人材 | 物流部門収支集計 物流改善タスク進捗管理 物流改善タスク立案 物流改善タスク決定 コスト削減タスク進捗管理 重要タスク実行 物流DXタスク実行 …等々 | <自分の物流スキル向上> 物流責任者知見の向上・体系化 物流戦術立案力の向上・体系化 <下位層の育成> 物流社員人材の育成 <2階層下の育成> 物流作業スタッフ育成プランの決定 物流作業スタッフ育成サポート |
物流社員人材 | 物流現場オペレーション管理 物流現場作業 物流改善タスク実行 コスト削減タスク実行 物流DXタスク実行 | <自分の物流スキル向上> 物流社員知見の向上 タスク立案&実行力の向上 <下位層の育成> 物流作業スタッフ人材の育成 |
物流作業スタッフ人材 | 現場オペレーション実行 生産性向上 物流改善タスク実行サポート コスト削減タスク実行サポート | <自分の物流スキル向上> 新たな業務手順の習得 効率的な業務手順の習得・向上 業務マニュアル作成 新人スタッフのサポート |
4つの階層別の人材育成の役割について
上記の表を見てもらうと、一番右の項目に「人材育成の役割の列」があります。物流人材育成のポイントは、3つあります。
一つ目は、 上位層は、下位2階層の人材育成を担うということです。 |
二つ目は、 自分の物流スキル向上を役割に入れることです。 |
三つ目は、 業務の役割に関連するスキルの育成を行うことです。 |
特に、上位2階層である「物流戦略人材」「物流責任者人材」は、自分と下位層、2階層下の3つのレイアーを育成をおこなうこととなります。また、中間層である「物流責任者人材」「物流社員人材」は、上位層に育成プランの指導を受けながら、育成していく必要があります。
一見簡単にみえる表ですが、役割を全うして進めていく事は、とても難しいです。
しかしながら、育成を地道に進めていくことで、間違いなく物流業務改善と生産性の向上を勝ち取る事ができます。
”業務の整理・体系化”が重要①「物流責任者人材」「物流社員人材」から
中間の2階層である「物流責任者人材」「物流社員人材」については、現場オペレーション運営と現場改善タスク実行におけるキーマンとなります。
まずは、この2階層の業務範囲、業務内容を明確化し、共有する事から始めましょう。その後の段取り・プロセスは下記を参考にしてください。
①業務範囲、業務内容の明確化しましょう。 |
②毎月やる仕事、毎週やる仕事、毎日やる仕事に分類しましょう。 |
③毎月やる仕事、毎週やる仕事を、月間カレンダーに表記しましょう。【月間業務担務表】 |
④毎日やる仕事を、時間単位(30分単位推奨)に表に落としましょう。【毎日の業務担務表】 |
⑤月間業務担務表と毎日の業務担務表を、関係各位と調整しましょう。【関係各位との業務調整】 |
⑥自らのスキル向上、下位層の育成スケジュール作成しましょう。 【月間育成スケジュール表】 |
⑦月間業務担務表と毎日の業務担務表、月間育成スケジュールを調整しましょう。 |
⑧各表のチェック表を作成し、毎日チェックしましょう。 【各表のチェック表】 |
⑨チェック表を毎週自ら確認し上司へ報告し、次週調整しましょう。 【確認・報告・相談・調整】 |
さて、上記プロセスをご覧いただき、多くの皆様が気づいていただけたかと思いますが、物流責任者人材、物流社員人材の役割の中で重要な「物流改善プランの実行」が、スケジュールに組み込まれていないです。その通りです。
順序としては、日々の物流現場オペレーション業務>人材育成>物流改善プランの実行ということになります。これは優先順位ではありません。思考プロセスの順序です。
上記スケジュールを作成した上で、物流改善プランの優先順位を見極め、物流改善プラン実行の時間を割いて、スケジュール化していくことが重要です。
他の記事で「なぜ?物流改善、コスト削減は進まないのか?4つの原因と対応策」を解説させていただきましたが、このプロセスとスケジュール化についても、その対応策でもあります。
”業務の整理・体系化”が重要② 次に「物流作業スタッフ人材」
前述の「物流責任者人材」「物流社員人材」と同じプロセスとなります。
そこで疑問になるのが、「物流作業スタッフ人材」の毎月やる仕事、毎週やる仕事って何だろう?という企業様も少なからずいらっしゃるかと思います。
「物流作業スタッフ人材」こそ、毎日やる仕事だけでなく、上記の仕事を有効的に活用する事をお勧めします。この仕事は「物流作業スタッフ人材」のやる気とモチベーション、そして組織での存在意義を高めてくれる効果が高いです。一例を下記に記載しておきます。
*倉庫内美化作業(倉庫内掃除、5S活動)
*共有事務所/脱衣所美化作業(トイレも)
*物流備品の補充(5S活動)
*要らないもの収集&廃棄(5S活動)
*自分の物流スキルマップと習得状況チェック
*理解できていない業務の洗い出し
(おすすめは、気持ちよく働ける倉庫環境を生み出す活動を盛り込むことです。)
人材育成を加速する各種ITツールを活用
物流現場オペレーションにおいて、人材育成は非常に重要である一方で、難易度が高いです。それは、日々の現場業務が忙しく、また生産性の向上が命題となっているため、なかなか人材育成の時間が取れないという「誤解・思い違いが、習慣化」しているためです。
前述で、物流現場オペレーション業務と人材育成業務をスケジュール化することを解説させていただきしたが、そこで使用する各種の担務表やタスク表やスケジュール表については、一定のフォーマット化が必須となります。また、各種マニュアルについても、同じ役割の社員・スタッフについては、フォーマット化して共有することが可能です。
上記については、物流現場オペレーション業務や人材育成に特化した、もしくは流用できるITサービスやツールがありますので、積極的に活用されると良いでしょう。
・物流現場オペレーション運営改善での物流DXについて→
社内に物流現場業務の重要性を共有する(働く意味とやりがいの醸成)
誠に残念な話ですが、
”物流業務(特に物流作業)は誰でも簡単に習得できる” や ”誰でも一定の時間をかければ出来ない人はいない”” 楽な仕事だ” という誤解や偏見も持っている方も多く存在します。
私個人の実体験では、物流現場業務は、社員やスタッフともに、簡単で楽な仕事ではありません。
(この記事をここまで読んでいただいている皆様は、日々物流に携わっている方かと思いますので、ご理解 いただけると思いますが)
まず働く環境は、全てが空調設備が完備されている訳ではなく、一日中立ち仕事であることがほとんどです。さらに、同じ仕事を何時間連続で行う事も多く、正確性と生産性が求められます。現在では各種ITツールによって、誰がいつミスをして、生産性についても計測されている状況です。一方で、毎日の入出荷の作業量は、ECの影響で予測が難しい状態となっており、日によって作業負荷が大きく違ってきます。
さらに、覚える仕事も多く、ミスは許されません。多くの作業が瞬時に判断が必要であり、体力だけでなく精神力も重要となっています。
そして、物流ロボットや機械が導入される中でも多くの仕事が労働集約型であり、チームでの業務となります。雇用形態も多様となっており、短時間で働く人や派遣スタッフなど正規雇用ではない方も多く存在します。続けていくことも簡単ではありません。
私がここで伝えたいのは、どんな仕事も、簡単で楽ではないという事ではありません。
上記の環境であっても、多くの物販企業様の物流部門や3PL物流会社で働く方は、粛々と毎日の物流現場業務と物流改善業務を遂行しています。
私は、物流現場業務こそ、人間性を高められる仕事、高い意識をもってやりがいのある仕事だと実感しています。毎日毎日が当日の業務をもれなく遂行する闘いであり、チームの力で乗り越えていける。今まで達成できなかった作業量が出来るようになった、同僚の社員やスタッフで助け合い感謝され、時には販売部門やクライアント様からも頼りにされる。そんな価値ある仕事の一つだと思います。
しかしながら、まだまだ物流現場業務のやりがいや楽しさを教えられず、毎日鬱屈しながらお金をもらうためだけの辛い仕事と認識しながら働いている物流現場社員・スタッフも多く存在すると思います。
私個人としてのミッションは、働く意義とやりがいを感じて、日々の業務を粛々と行っていく物流現場社員・スタッフを増やしていくことです。
・物流現場人材の働く意識(働き甲斐)を高める方法について→
物流作業スタッフ業務を「誰もが活躍できる育成重視型」に変えていく
前述で、物流現場業務の重要性を高め共有する(働く意味とやりがいの醸成)について解説してきましたが、物流戦略人材様や物流責任者様にとって有的な、構造的に誰もが活躍できる物流現場スキームについて解説させていただきます。
まず初めに、物流現場スタッフが新規採用され、一通りの業務を習得するのにかかる期間はどれくらいでしょうか?一般的な見習い期間は3か月の場合が多いと思います。
現在の物流現場オペレーション運営上の大きな課題は、労働力不足です。それも、新規採用が非常に難しく、また新規採用人材の定着率が低いことが挙げられます。この傾向は、今に始まったことではなく、2015年を境に少しづつ悪化している状況です。
そのような状況を打破するためには、物流現場オペレーション運営の方法を大きく変える必要があります。
重要なポイントは、今日初めて参加したスタッフでも出来る業務と役割を最優先して構築することです。言い換えれば、「新人スタッフの戦力化」に重きを置いた業務運営を構築することです。
重要なポイントは3つあります。
一つ目は、 スタッフ業務の「徹底した分業化」です。 |
二つ目は、 スタッフ業務の「意欲的な多能工化」です。 |
三つ目は、 現場社員の「スタッフ配置能力の向上」です。 |
四つ目は、 新人スタッフが「すぐに活躍できる業務」の構築です。 |
新人スタッフが定着しない理由で一番多いのは、働く環境になじめないことです。
既存スタッフが阻害しているとか言うことではなく、そもそも物流現場は生産性高く、役割分担されているため、業務中はなかなかコミュニケーションがとれる環境ではありません。ましてや業務を覚えて戦力化するまで時間がかかるのであれば、なおさら孤独感・閉塞感を強く感じてしまいます。
また、物流現場が熟練スタッフによって指揮されている場合は、さおさら既存の人間関係の壁が大きくなってしまいます。
変えるべきは、物流現場オペレーション運営のやり方です。
「熟練スタッフを頼りにせず、現場社員中心に現場を指揮するモデル」であり、原則スタッフ間での上下・先輩後輩関係をつくらず、フラットな関係とすることです。
スタッフ業務は、分業化と多能工化をコンセプトに、新人スタッフや派遣スタッフに担ってもらう仕事を構築していく。熟練スタッフは多能工化していき、始業当初から新人スタッフが出来ない仕事に現場社員が配置する。そして、現場社員は時間の経過とともに、作業負荷を見ながら、残り時間と残り作業量を換算して再配置を繰り返す。
そして、結果として現場社員は、日々の生産性の向上と現場改善を、現場スタッフとともに実行していくというスキームを構築する必要があります。
ここまでの「誰もが活躍できる育成重視型」の現場運営方法に興味を持っていただいた方は、詳しくはこちらをご覧ください。
・「誰もが活躍できる育成重視型」の現場運営方法について→
自社物流人材育成:4つの物流階層別育成方法 まとめ
ここまで、物販企業様の「自社物流人材育成:4つの物流階層別育成方法」について、説明させていただきましたが、ご興味をいただけましたでしょうか?
もっと詳しく知りたい方、さらに具体的な方法を知りたい方はいらっしゃいますでしょうか?
LogiGaden(ロジガーデン)では、物流改善の具体的な施策について、もっと深堀りして発信してきたいと計画しております。各種準備が整い次第、随時ブログにて発信させていただきます。
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